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労務トラブル多発中!フランチャイズ運営において気をつけたい雇用契約

2018/06/20(配信元:FCオーナーズ運営事務局)

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フランチャイズ運営を行うにあたり、多くの場合、会社または個人事業主として従業員(正社員、契約社員、パート、アルバイト)を雇用することになります。従業員をひとりでも雇うとなると、たとえアルバイトであったとしても従業員との間に雇用契約が成立し、労働基準法などの労働法規が適用されます。

労働者意識の高まりなど、近年の社会情勢において、労働者と雇用主との間の労働トラブルが多く発生しているため、注意が必要です。

今回は、フランチャイズ運営において従業員を雇用する上で気をつけたい点を見ていきましょう。

■1.フランチャイズでよくある労務トラブル事例

フランチャイズでよくある労務トラブルの代表的な事例は、従業員の長時間労働による未払残業代が請求されるケースです。飲食店やコンビニエンスストアなどには24時間営業の店舗が数多くあり、また、店舗の新規開店時に業務量が過多になることで従業員の労働時間が長時間にわたることが少なくありません。

このような場合、従業員に対して残業代(割増賃金)の支払いをしていないと、過去にさかのぼって(多くの場合は2年分)、まとまった残業代の支払いを求められることがあります。

次に多い労務トラブルは、従業員を解雇したり、契約期間の更新を拒絶したりするときに従業員からその無効を争われるケースです。フランチャイズ運営においては、従業員としてアルバイトやパートが雇用されることが多いと思われます。契約期間が定められていなかったり、契約期間が定められていても複数回にわたり更新され長期間にわたっていたりすれば、その従業員を解雇もしくは契約更新を拒絶するには労働法規に定められる厳しい要件を満たさなければなりません。

このような解雇もしくは更新拒絶の有効性が争われるとき、紛争が長期化するだけでなく、無効と判断された場合にはその従業員が職場に復帰した上でそれまでの間の給与の支払いが命じられることがあるため、雇用主にとってかなり大きなダメージが与えられることになります。

■2.労務トラブルを未然に防ぐ雇用契約の注意点

従業員との間の雇用契約は口頭でも成立しますが、法律により雇用主は従業員に対して労働条件を明示する義務が課せられています。

以下の5つについては、書面を交付して明示することが雇用主に義務付けられています。

  • 1.労働契約の期間に関する事項
  • 2.就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
  • 3.始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の就業転換に関する事項
  • 4.賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払いの時期
  • 5.退職に関する事項(解雇の事由を含む)

また、契約期間が定められた「有期雇用契約」を締結するには、上記に加えて「更新の有無」「更新がある場合には更新の判断基準」も明示しなければなりません。さらに、パートタイム労働者を雇用する際には「賞与の有無」「退職手当の有無」「昇級の有無」を明示することが求められています。

このように、雇用主が従業員を採用する際に交付が義務付けられている書面のことを「労働条件通知書」といいますが、雇用主と従業員との間で「雇用契約書」を作成し、その契約書の条項として「労働条件通知書」で記載すべき内容がすべて含まれていれば、あらためて「労働条件通知書」を交付する必要はありません。

雇用契約書には、労働条件の通知として明示することが義務付けられている内容だけでなく、業務形態等により規定しておいた方がよい内容(従業員のSNSの取扱いや秘密保持に関する内容など)も盛り込むことが可能です。

雇用契約書には、雇用主および従業員の双方が署名・押印して2通を作成し、それぞれ1通を保管するようにして将来のトラブル防止を図りましょう。

■3.もしも労務トラブルが起きたら……早期に専門家に相談し速やかに対策を

とはいえ、フランチャイズ運営において労務トラブルが起こることはありえます。従業員との間でトラブルが発生したら、放置せずに速やかに対応するようにしましょう。

ただ、労働基準法を中心とした労働法規は、基本的に労働者を保護する内容となっているため、雇用主が自らの感覚に頼って従業員とのトラブルに対応してしまうことで、誤った対応をしてしまうケースが多々見受けられます。

特に、従業員から未払残業代を請求されるようなケースにおいては、放置することにより遅延損害金や付加金(未払い金額と同額)の支払いを要求されることや、場合によっては労働基準監督署による調査の対象となることも。従業員からの申し入れがあったり、内容証明郵便などが届いたりした際は、早期に専門家へ相談するなどして対応するようにしてください。

■4.小さな労務トラブルが、フランチャイズ運営に甚大なダメージをもたらすことも

今回は、フランチャイズ運営において従業員を雇用する上で気をつけたい点について見てきました。

労務トラブルを未然に防ぐには、雇用契約について雇用主および従業員の双方が認識を合わせておくことが大切です。口約束ではなく、必ず書面を交わすようにしましょう。

小さな労務トラブルが、フランチャイズ運営に甚大なダメージをもたらすリスクがあることを肝に銘じておいてください。

牧 隆之

弁護士

1973年、京都府生まれ。大阪大学法学部卒。大学卒業後に企業で法人営業を担当した後に司法試験に合格。2008年9月に独立開業。現在、大阪駅前に事務所を置き、関西全域の多数の中小企業の顧問弁護士として契約関連、労務対策を中心とした予防法務に力を入れる。