2018/05/07(配信元:FCオーナーズ運営事務局)
「フランチャイズ契約書」とは、フランチャイズ経営を行うにあたり、フランチャイズ本部との間で締結される契約書のこと。フランチャイズ契約書は分量が多く(場合によっては10ページ以上にも上ります)、法律用語もたくさん使われるため、内容を全く理解しないまま契約書に署名・押印してしまうことがあるかもしれません。
しかし、契約書に署名・押印することは、契約書に書かれている内容について了解したことになりますので、必ず契約書の全文を読み、理解することが必要です。また、フランチャイズ契約は事業者間の契約となるため、クーリングオフの対象外となることも理解しておきましょう。
今回は、フランチャイズ契約書を確認する際の重要な5つの注意点についてみていきます。
フランチャイズ経営においてフランチャイズ本部へ支払う主な金銭は「ロイヤリティ」となりますが、その他にも加盟金、保証金、研修費用、開設パック費、店舗設計料、研究調査費などの名目の金銭の支払いを求められることがあります。
まず、契約書に記載される内容の金員(きんいん)の支払い(ロイヤリティの計算方法を含む)について、本部による説明内容(法定開示書面の記載内容)と相違ないかを確認しましょう。次に、それぞれの名目の費用について、返金を受けることができるケースと、そうでないケースを確認してください(開店に至らなかった場合や、中途解約の場合など)。
フランチャイズ契約においては金銭の支払いや返還に関するトラブルが最も多いのが実情です。それぞれの金額だけでなく、支払いや返金の条件について事前にしっかりチェックしておきましょう。
フランチャイズ契約においては、フランチャイズチェーンを保持するためのリスクマネジメントとして「違約金条項」が定められているケースが多くあります。そこで、契約書を確認する際には、違約金の金額だけでなく、違約金の支払いが必要となるシチュエーションについてチェックしておきましょう。
一見すると、フランチャイジー側からすれば、違約金条項が存在しない方が望ましいようにも感じられますが、他のフランチャイジーによる契約違反行為が横行してフランチャイズシステム自体が崩壊してしまえば元も子もありません。そのため、違約金条項が適切に設定されているかという観点で確認することが大切です。
フランチャイズ本部がフランチャイジーに対して営業地域などを指定する制度を「テリトリー制」といいます。
フランチャイズ経営においては、近隣に競合店が出店することにより、顧客が奪われて閉店や撤退を余儀なくされるケースが少なくありません。しかし、一定の範囲内でフランチャイジーに独占的な営業権が与えられるかたちでの「テリトリー条項」が規定された場合、直営店も他のフランチャイジーも、同地域で開業することができなくなります。
そこで、契約締結時においては必ず契約書にテリトリー条項が定められているか、その内容がどのようなものであるかを確認するようにしてください。テリトリー条項には、単にフランチャイジーの営業範囲が限定されるだけのものや、同一エリアにおいて一定数のフランチャイジーの活動に限定するものなど、さまざまな形態が存在しますので、注意しましょう。
もし、フランチャイズ契約書においてテリトリー条項が定められていない場合、本部に対して今後の出店予定などを確認しておくことが望ましいでしょう。
競業避止義務とは、契約で許容された範囲を超えてフランチャイズ本部の営む事業と同種または類似の事業を営んではならないとする義務のことをいいます。
このような規制も、一見すればフランチャイジーにとって不利益となる規定のように感じられるかもしれません。しかし、フランチャイズチェーンを保持する上でノウハウなどが流出してしまえば、既存のフランチャイジーにとっての優位性が失われることになります。「フランチャイジーの利益を守る」という視点も加味して確認してください。
具体的には「禁止される業務の範囲」「禁止される場所」「禁止される期間(契約終了後にも規制されるケースが多いです)」につき、正確に把握できるように注意しましょう。
フランチャイズ契約の契約期間は、法的に何らかの基準があるわけではなく、フランチャイズの内容によって異なります。一般的には、フランチャイジーによる投下資本の回収に必要な期間が判断要素となるでしょう。
ただし、途中解約の場合に解約金や違約金の支払いを求められるケースがあるため、契約期間が長いほど、解約金や違約金を支払わなければならないリスクが高くなるといえます。
また、契約期間の更新時に更新料などの名目の費用の支払いが発生することも。契約書の記載内容に十分に注意してください。
以上のとおり、フランチャイズ契約書の内容はフランチャイズ経営を進めていく上で極めて重要な内容が記載されています。必ず全文を読み、きちんと理解するようにしてください。
分からない内容があれば、フランチャイズ本部へ問い合わせて説明を受けるべきです。また、フランチャイズ契約書の内容について専門家のリーガルチェックを受けるのも有益でしょう。フランチャイズ契約書については「分からないことをスルーしない」が鉄則です。
牧 隆之
弁護士
1973年、京都府生まれ。大阪大学法学部卒。大学卒業後に企業で法人営業を担当した後に司法試験に合格。2008年9月に独立開業。現在、大阪駅前に事務所を置き、関西全域の多数の中小企業の顧問弁護士として契約関連、労務対策を中心とした予防法務に力を入れる。