2018/06/06(配信元:FCオーナーズ運営事務局)
フランチャイズ契約においてフランチャイジーが中途解約をする場合、多くの場合に違約金(もしくは解約一時金)の規定が存在します。中途解約のタイミングによっては違約金がかなり高額になるケースもあり、トラブルを引き起こすことも。
そこで今回は、違約金が減額または免除されるフランチャイズ契約の中途解約の進め方についてみていきましょう。
フランチャイズ契約を終了させる方法としては、主に以下の4つの方法があります。
フランチャイジーが契約期間内にフランチャイズ契約を解約したいと考えるとき、その解約の原因がフランチャイズ本部側の契約違反にある場合、債務不履行に基づく解除(2)を行うことになります。この際、フランチャイジーが違約金を負担する必要はありません。
フランチャイズ本部の債務不履行を主張するためには、フランチャイズ契約書を熟読の上、フランチャイズ本部に契約違反がないかをチェックし、その証拠を収集することが必須です。
なお、フランチャイズ本部に契約違反がない場合でも、フランチャイズ本部とフランチャイジーとの話し合いによってフランチャイズ契約を終了させる合意が成立する場合には合意解約(3)となります。この場合も、当事者間での合意により契約が終了することとなるため、フランチャイジーが違約金を負担することはありません。
もっとも、フランチャイズ本部が契約終了の合意に応じてくれることが前提となるため、フランチャイジーとしてはフランチャイズ経営において自らの落ち度や契約違反がないことを主張するだけでなく、フランチャイズ本部の落ち度も指摘するなどの交渉力が要求されることとなります。
そして、上記の債務不履行に基づく解除(2)や合意解約(3)ができない場合、フランチャイジーとしては中途解約(4)を検討することとなります。
では、フランチャイズ契約書に中途解約時の違約金の定めが規定されていれば、フランチャイジーによる契約期間内の中途解約においては必ず違約金の支払義務が発生するのでしょうか。
中途解約における違約金の規定は、フランチャイズチェーンの信用性および統一性維持などの観点から必要なものと考えられます。その一方で、フランチャイジーの営業の自由(離脱も含む)も憲法で保障される基本的人権のひとつと考えられることから、多額の違約金の規定はフランチャイジーの解約申し入れが事実上制限されることとなるため、解約金の規定が公序良俗違反として一部無効と解釈されることがあり得ます。
実際の裁判例においても、以下のように判示した上で800万円の違約金につき30万円の限度で有効と判断したものがあります。
「フランチャイズ基本契約などの継続的契約の解約一時金などの条項の公序良俗違反を判断するにあたっては、当該条項の趣旨、目的、内容、それが当事者双方に与える利益不利益、それが締結されるに至った経緯、契約両当事者の経済的力関係等の他、契約の諸条項は契約の一方当事者が自己の取引上の優越的地位を利用して正常な商慣習に照らして不当に相手方に不利益となる取引条件を設定したものとみられるものでないかどうかなど、証拠に現れた諸般の事情を総合的に考慮してその有効無効の範囲、程度などを決するべきである」
上記のような裁判に至らなくても、フランチャイジーによる中途解約にあたりフランチャイズ本部との交渉により(フランチャイジー側の中途解約に悪性性がないことの主張やフランチャイズ本部側の落ち度を指摘など)、違約金の減額や免除の交渉が成立することはあり得るでしょう。
そもそも、フランチャイズ契約を中途解約する状況に陥る最大の原因は、事業リスクの検討が不十分であることがあげられます。
フランチャイズ本部に加盟することは、一から独立開業することと比べて事業リスクは低いと考えられますが、フランチャイジーも独立した事業主であることに変わりなく、事業内容を検討するとともに、立地条件や経済環境に配慮することが求められます。
また、フランチャイズ本部が公表する売上などの経営予測をそのままうのみにするのではなく、算出根拠の説明を受けるなどして収支の予測を立てなければなりません。
他にも、フランチャイズ本部による経営指導が受けられないことが中途解約の原因となることもあります。この場合、フランチャイズ契約書の記載内容を十分確認することにより、いかなる内容の経営指導が契約上予定されているかを事前に明確にしておくことが大切です。
以上のとおり、フランチャイズ契約の中途解約においては、事前の対応により違約金の支払いを減額・免除できるケースも存在します。
やむなく中途解約するときは、違約金の支払いの有無につき情報を収集した上で交渉に臨むようにしましょう。
牧 隆之
弁護士
1973年、京都府生まれ。大阪大学法学部卒。大学卒業後に企業で法人営業を担当した後に司法試験に合格。2008年9月に独立開業。現在、大阪駅前に事務所を置き、関西全域の多数の中小企業の顧問弁護士として契約関連、労務対策を中心とした予防法務に力を入れる。