2018/06/18(配信元:FCオーナーズ運営事務局)
フランチャイズビジネスを始める場合、例えば在宅や無店舗で可能なビジネスであれば、200~300万円程度の予算で開業できるものがたくさんあり、中には100万円以下の資金で独立できるフランチャイズもあります。
一方、店舗を構える必要のある飲食店などになると、最低でも1,000万円以上かかるケースが多くなります。ただ、コンビニやお弁当チェーンなどのフランチャイズの場合、土地や建物はFC本部が用意し、それを加盟者にリースするという方法もあって、そうなると店舗型の開業でも予算は150~400万円ほどともいわれています。
今回は、幅広いフランチャイズの独立予算についてみていきましょう。
フランチャイズビジネスは、業種によって独立予算の相場がおよそ決まっています。以下、フランチャイズが活発な主な業種をまとめてみました。
よく見落とされがちですが、これらの予算に飲食業であれば食材費、小売業であれば商品仕入代金は含まれていません。飲食業でいうなら、例えば自分の店を同業種のFC店にして再出発する場合、厨房設備をはじめとする基本的な店舗設備は既に整っています。その上でのFC加盟となれば、FC加盟料の他は看板やメニュー、食器を新調するだけで事足り、独立予算は安く見積もることができます。
しかし、何ら設備を持たない状態で出店しようとするなら、自ずと何から何まで費用はかかってしまい、多額の資金を用意しなければなりません。これと同じように、学習塾を始めるにあたり教室を新規で準備するとなると、300万円以上も余計にかかることもあります。
また、コンビニエンスストアの独立予算も「意外と少ない」と思われるかもしれませんが、この場合も「商品仕入代金が入っていない」からです。標準的な大きさの店舗でも、商品総額は500万円を下りません。ただし、コンビニエンスストアのFC本部は、オーナー(店舗)支援の一環としてFC本部がオーナー側に仕入代金を貸し付ける制度が確立されています。こういった融資制度を利用することも視野に入れつつ、実際に必要な独立資金を細かく確認することがどの業種でも必要です。
修理業、ハウスクリーニング業、デイサービスなど、車で顧客宅に移動する業種も、営業車は自分で手当てすると考えていたほうがよいでしょう。
独立予算が少なくて済む理由としては、一般的に次のようなことが考えられます。
ハウスクリーニング業A社を例に取ると「自宅で開業でき、店舗を構える必要がない」とうたっています。制服と専用の掃除用具一式をそろえなければなりませんが、購入しても150万円程度で済み、リース制度を利用する人も多いようです。加盟金、差入保証金、技能研修費を合わせて、約70~80万円程度を支払えば事業を始められます。そして、2週間の技能研修を済ませれば、誰でもできるようになるのが強みといえるでしょう。ただ、このA社のFC本部は、店舗網をさらに充実すべく「面」の展開に移っており、オーナー側に排他的な独占地域をあてがわれることには期待薄です。したがって、オーナー側も自分の客は自分で見つける必要に迫られるでしょう。
一方で、独立予算が高い業種はやはり飲食業であり、その中でも名前の通ったFCに加盟する場合です。名前が通っているだけに、自然に顧客は集まります。全国展開の飲食業B社、C社のFC加盟プランには共通して次の費用が記されています。
加盟金は、まさしく名前の通った飲食チェーンの看板使用料(=ブランド使用料)です。誰もが知っているからこそ、より高いのは当然です。造作費は、ブランド力が強ければ強いほど、見ず知らずの他店とも統一感を出さなければなりません。そのため、ありとあらゆるところに細かく費用をかけて店舗を完成させなければならないのです。設備費もそうで、商品の質を保つため、本部が指定したものは必ず導入するしきたりです。
せっかく資金を投入してビジネスを始めるのですから、回収して利益を作っていかなければなりません。そう考えると、独立予算の高い・低いだけに目を向けるのではなく、今後マーケットが大きくなる業種を狙うのがよいのではないでしょうか。
日本の総人口は減少していきますが、70歳以上の高齢者人口は今後30年以上にわたり増え続けます。「高齢者ビジネス」といわれる高齢者を主な顧客とするビジネスは期待が持てるでしょう。
また、総人口が減っていく中で、大都市への人口集中は今後も継続します。共働き世帯も着実に増えている今、都会に住む人々の間でコインランドリーの利用が増えているようです。特にタワーマンション界隈では「布団を外に干せないため、洗濯物はまとめて洗いたい」といったニーズに応える形で、大型ランドリーの需要は高まるものと思われます。「時間を費やす」という共通項で、ファミリーレストランや車検サービス、理美容業、フィットネスクラブとのコラボレーションが生まれるかもしれません。
フランチャイズビジネスは、まだまだ進化するでしょう。現在では想像もつかないような業種が、FCビジネスを始めていても不思議ではありません。
なお、FC本部は加盟希望者向けにシミュレーションを伴った独立予算の目安や収益予想を出していますが、それらの数字を鵜呑みにしないようにしましょう。理解できない費用項目や算定根拠は、納得できるまでFC本部の担当者に聞くか、経営の専門家に助けてもらうかを勧めます。「FCビジネスを始める」という大きな決断を下すには、慎重さも必要です。
FCビジネスで初めて事業を行うような方は、その決断次第で人生をも左右します。素敵なFCビジネスとの巡りあわせを期待しています。
松本 孝徳
経営コンサルタント
1964年、兵庫県西宮市生まれ。兵庫県立西宮今津高等学校卒業。明治学院大学法学部卒業後、株式会社近畿銀行(現近畿大阪銀行)入行。国際業務と債権回収業務の経験を積む。 その後、事業再生コンサルティングファームを経て、得意とするガバナンス分野で東証一部上場企業のプロジェクト・マネージャーを務める。兵庫県などが出資する第三セクター・北条鉄道株式会社の取締役副社長に就任。再生の過程は「日経ビジネス」や関西テレビ「ニュースアンカー」に取り上げられる。経営職、最高財務責任者(CFO)の経験多数。2011年、ストラテジック・コンサルティング合同会社設立。2012年度からは海外進出日系企業のターンアラウンド(事業再生)も展開。
HP「ストラテジック・コンサルティング」